精一杯の背伸びを





「そうだね。もう少し愛情表現があってもね」



「ふむ。例えば?」



 私は朔ちゃんと小夜ちゃんを交互に見つめ、聞いた。



「まぁ、無難に『早くお前に会いたい』とか」



「そう。そんな感じの言葉」



 私は思いっきり眉をしかめた。



「榊田君からそのメールが自分に届いたらどう思う?」



 小夜ちゃんは、カップを持った手をぴたっと止め、硬直した。



「そんなの想像したくない。吐きそう。気持ち悪いこと言わないでよ!」



 朔ちゃんはそう言いながらぶんぶん首を振った。



「でしょ?広君だけで十分私は満足だよ」



「あ~広也ね。あれは病気だわ」


「広也君はフェミニストだから、女性を褒めないと気がすまないんじゃない?」



 苗字で広君を呼ぶと傷ついた顔をするから、みんな名前で呼んでいる。



「広也がフェミニスト!?あれはただの女好きでしょ」



 誰に対しても口説くことを忘れない彼をフェミニストと取るか女好きと取るのか私にはわからない。


 ただ私の中で広君の口説きは挨拶のカテゴリーに分類されている。


 芝居かかった愛の言葉を聞くたびに、仁くんに言われたらどんなだろうと考える。