精一杯の背伸びを





 端整な顔をいきなり近づけられて、ドキドキした。


 緊張して手が震え、本当にうっかり髪に火を点けてしまいそうだ。


 形の良い口に、鼻筋がしっかりと通り、色素の薄い髪が太陽の光を浴びて、とても綺麗だ。


 その顔を台無しにすることは出来ないと、慎重に火を点ける。


 彼が煙を吐き出す姿を眺めながら、おじさんとおばさんがいた頃を思い出した。


 彼の肩を軽く叩き、



「湧き水のところにいるから」



 そう言って、歩き出す。


 久しぶりの再会だ、私がいては邪魔だと思った。






 墓地へと続く坂に湧き水がある。


 ここでみんなヤカンに水を汲んでお墓に持って行くのだ。


 冬は凍り水は出ないが、夏は雪解けの水が出てくる。


 水が冷たすぎて、一分も手を浸していられない。


 湧き水で、首を冷やすと気持ち良かった。


 目をつぶると、あまりの心地良さに眠ってしまいそうだ。



「気持ち良さそうだな」



 仁くんが、坂道を歩きながら声をかけてきた。


 水にもう一度手を浸し、彼の腕を掴む。



「やっぱり、冷たい」



 彼もしゃがみ込んで手を浸し、顔を覆った。


 私もやりたかったけど日焼け止めが落ちると困るから、ぐっと堪える。


 少し湧き水でクールダウンし、お互いの手が冷たさで赤くなった頃、帰ろうと立ち上がる。