「…………」



「お前は心配させやがって」



「仁君、男前になって!私が二十年、ううん、十年遅く生まれてればね」



「…………」



 家に着いた途端、実の娘よりも彼との再会を喜ぶ両親ってどうなんだろうと思う。


 一人娘が帰ってきたというのに、2人そろって、彼を小突いたり、頭を撫でたりしている。


 そして、彼は面食らいながらも嬉しそうだ。


 私だけが蚊帳の外。


 お母さんは仕方がない。


 ミーハーだから、こうなることは予想の範囲内だ。


 しかし、お父さんは私から見ても親バカだ。


 私が上京したときも、「どうしても行くのか?今ならやめられるぞ」と、しつこく言っていた。


 それが今は、仁、仁と言って、彼が愛息子の扱いだ。











 愛息子…でも、お父さんもお母さんもそう思っているに違いない。


 自分たちの本当の息子だと思って接している。


 彼の両親が交通事故で亡くなった時、彼はまだ中学三年生、歳にして、十五歳だった。


 遺産や保険で金銭面での不自由はなかったけれど、未成年には違いなかったから、水野家の一員となった。


 私と彼の家族は仲が非常に良かった。


 狭い町だから、ご近所づきあいはどこも盛んではあったが特にだ。


 うちの両親と仁くんのおばさんが同級生で家は隣。


 二人のパパとママがいると小さい頃は思っていた。


 お互いの家を自由に行き来していたし、毎年、そろってキャンプやスキーに行くことを恒例としていた。


 だから、お父さんやお母さんにとって仁くんは息子同然だし、私もおじさんとおばさんにとっては娘同然に可愛がってもらった。そんなだから、私と彼は兄妹同然で育った。