その一週間後、約束した通りの時間に迎えの車はきた。
「ちゃんと起きてたか」
あいさつを交わした後、私が寝起きが悪いことを知っている彼は感心したように言った。
「仁くんを待たせるわけにはいかないからね」
そう、寝坊で彼との時間を不意にすることはできない。一分、一秒でも長く一緒にいたい。
帰省ラッシュに重なってしまったが、彼が運転する車ならそれはむしろ私にとっては幸運でしかない。
一休みでサービスエリアで焼きそばを食べている彼に私は悪戯な笑みを浮かべて、煙草を取り出した。
コンビニに入ったとき、彼が持っていたのと同じ銘柄を見つけ、未成年だとバレないかとドキドキしつつ、店員に番号を言ったのは記憶に新しい。
「未成年が何持ってる」
彼は案の定、眉をひそめ、私を見た。
「私が吸うわけじゃないもん。どうせ仁くん、煙草持ってきてないだろうと思って買っておいたの」
「俺は元から、めったに吸わない。ほら、寄越せ」
私の目の前に出された手を無視して、煙草をカバンに戻した。
「おい」
「残念。ライターで火を点けてみたかったのに」
大げさにしょげて見せると、彼は諦めたように首を横に振り、
「絶対、吸うなよ」
と私の頭を小突いた。
吸わないよ。
これはとっておきの再会のために用意したものだから。
それを彼が知るのは、数日後のことだ。