精一杯の背伸びを











 夜だとは思えないほどの明るさに包まれていた。


 橋の下を流れる川は雪に埋め尽くされていて、冬を象徴しているようだ。


 辺りは音もなく静かで、雪を踏みしめる音と自分の息遣いが大きく感じられた。


 時折、風が吹き、マフラーが軽やかに揺れる。


 一緒だ。


 八年前と一緒。


 あの時と違うことは、私が身に着けているのが彼のマフラーであること。


 そして手を繋いでいること。


 繋いでいた手を離した瞬間が恋のはじまりだった。


 だから、八年前。


 私は彼の差し伸べられた手を拒んだ。


 今は差し伸べられた手を掴んでいる。


 しっかり。


 八年前のこの日。


 彼にふさわしい女性になりたいと願った。


 自分を変えたいと思った。


 何もできないで泣いているだけの自分を。


 そして、今日であれから八年。


 今、終わりを迎える。


 終止符を打とうとしている。


 諦めなければ前に進めない。


 これで終わりにしよう。


 幼き自分を。


 すぐに変わることなんてできない。


 でもこの決意が、はじまりになる。


 私は立ち止まった。