「小春ちゃんの顔を叩くなんて、あいつが悪い。朔と俺で思いっきり殴っておいたけど小春ちゃんも殴るべきだ」
広君は強く拳を握った。
「いい。榊田君の顔も見たくないの。何で、榊田君はあんなに勝手なの!?何でも自分の思い通りにならないと気がすまない。最低」
つい語調が強まる。
言っている途中で、はっとする。
親友である榊田君のことを悪く言われたら広君が気分を害するのに。
心の中で、いろんな感情が渦巻いてコントロールが利かない。
まただ。
朔ちゃんに対しても、小夜ちゃんに対しても同じことをした。
「ごめんなさい。私、どうかしてるね」
大きく息を吐いて、心を落ち着かせようとする。
「小春ちゃんが気にすることないよ。俺のほうがいつも散々、俊の悪口言ってるし」
笑いながら言う。
だが、広君はすぐに笑いを止めて私の顔を覗き込んだ。
その表情は真剣だった。
いつもと違う広君に、俯いてた顔を思わず上げる。

