精一杯の背伸びを





 誰もいなかったから長湯をしてしまった。


 すでに夜中の二時を過ぎている。


 お風呂からあがり、のどが渇いたから休憩室に立ち寄る。


 誰か人がいるのがわかった。


 それなら遠慮しようと通り過ぎようとした。


 そこにいたのは広君だった。


 お互い、目を見開いて驚いた。


 次の瞬間には広君は笑顔で手招きをした。
















「はい」



 広君がお水を手渡した。



「ありがとう」



 のどが渇いていたから、ごくごく飲めた。



「もう体調は大丈夫なの?」



「うん。もう平気。健康だけが取り柄だから。心配かけてごめんね」



 私は眉を下げた。



「小春ちゃんが、元気になってくれたらそれで十分」



 そう私に微笑みかけてくれる。


 きっと、榊田君たちから聞いているに違いないのに私への態度は変わらない。



「せっかくの旅行、私が台無しにした。ごめんね。広君、夏から楽しみにしてたのに」



 広君は苦笑した。



「俊と喧嘩したんだって?」



 榊田君の名前を出され、水を持つ手が少し震えた。