良かったね。 おめでとう。 お幸せに。 そう言えれば良かった。 そう言いたかった。 だけどそんなことを言ったら。 私も彼も傷つくだけ。 今でも十分お互いを傷つけているけど。 わかっているけど。 心に一線を引いてしまわないと。 私は立っていられない。 そして、今は空虚な世界で立っている。 ねぇ、仁くん。 私にこれ以上どうしろと言うの? これ以上は無理だ。 彼を傷つけているのがわかっても。 リビングのドアが開き、申し訳なさそうに佳苗さんが顔を出した。