精一杯の背伸びを




 彼がこんなに当惑している姿を見たのは久しぶりだ。


 言葉が見つからないのに彼は私の手を再び握り締めたまま離さない。


 私は彼をじっと見つめ、微笑んだ。


 皮肉な微笑みではなく、優しい微笑を。


 大好きな兄に向けるような。



「そういう顔しないでくれ。泣いてくれたほうがずっと良い」



「この間は、泣かれると困るって言ったくせに。勝手だ」



 私はぷいっ、と顔を背けた。


 今までと変わりない幼馴染の私では不満なのだろうか?


 勝手だ。


 本当に勝手だ。


 泣いても困る。


 笑っても困る。


 私は一体どうすれば良いのだろうか。


 仁くんは満足してくれるのだろうか。


 もう、どうでもいい。