「小春」 名前を呼んだだけで先が続かない。 何を言うべきかわからないのだろう。 私は手を振り払おうとしたが、びくともしない。 「離してくれる?」 真っ白だった頭から、もやが取れていく。 不思議なほど穏やかな声だった。 感情がない。 穏やかな声。 肩を掴まれ、無理やり彼のほうに体を向けられた。 私の顔を見た彼は、虚をつかれたようだった。 私が…… 「泣いてるとでも、思った?」 自分を嘲るように口端を上げる。 ひどく醜い顔をしているのだろう。