手を洗い終えた佳苗さんに再度握手を求められる。
「小春さんのことは、じ、三原さんから良く聞いています」
私はその握手に応じながら、朗らかな笑みを返す。
「私も仁くんって呼んでるんですから、彼女さんが遠慮することないですよ」
目を細め彼女に好意の眼差しを送る。
頭が真っ白の中、反射的に笑みが浮かんだに過ぎない。
「あ、はい。仁の言ってた通り、すっご~く素敵ね!」
佳苗さんは仁くんに小首を傾げて同意を求めた。
「あの。私、帰りますね。せっかくの休日を邪魔してごめんなさい」
早口でまくし立てた。
ぺこりと頭を下げ、そのまま足早にリビングのドアを開ける。
佳苗さんが、どもりながら何か言っている。
玄関口で手首をぐいっと掴まれた。
振り向くことはしなかった。
「ごめんね。本当に気が効かなくて」
私は笑いながら言った。

