精一杯の背伸びを






 彼は、すごく気まずい顔をしている。


 彼の考えていることが手に取るようにわかる。


 ずっと一緒にいたから。


 ただ思い過ごしをしているだけ。


 心の中でそう希望を持っている自分も確かにいた。


 その希望が私の背中を押した。



「えっと、彼女は」



 そこで言葉が詰まる。


 声が震えてしまいそうで。



「そうだ!私ったら紹介もしてなかった!えっと、伊藤佳苗です」



 そう言って握手を求められる。


 が、慌てて彼女は手を引っ込めた。



「待ってください。手、今すぐ洗いますから」



 そんな彼女を見ていると、違う。


 私の勘違いだ。


 そう思った。


 言い聞かせた。


 でも、彼の表情と自分の直感を信じるなら。


 そして、それが正解だということもわかっていた。