「本読んでたらいつの間にか。仁のお鍋ダメにしちゃった」
えへへ。
そう苦笑いを浮かべ彼女は頭を掻いた。
落ちたスペアリブをしゃがみこみ拾いながら、手が震えた。
「こ、小春さん。私がやりますから!」
「片付けは慣れてますから」
俯いているから私の顔は見えない。
だけど、私は必死に笑みを浮かべた。
「小春」
少し顔を上げると、彼の足が視界に移り、立ち上がる。
ひどく体が重たかった。
「ごめんね。突然押しかけて」
仁くんには本当は笑ってないことなんて私の顔を見ずともわかってしまう。
それでも微笑んだ。
そうしないと、嫌な予感に呑まれてしまいそうで。

