「本当、勝手に連れまわして申し訳ない……です。
お詫びと言っては何ですが、何でもします。
……不可能なこともあるかもしれないけど。」
俺は同じベンチの隣に座っている彼女の方を見た。
肌とか、髪とか、気を遣っているんだろうな……って分かる。
「サイン‼︎……いいですか⁇
写真も……撮って欲しいです‼︎」
「大丈夫ですよ、何処にサインしましょう⁇」
後でマネージャーにグチグチ言われそうだけど、まぁ 大丈夫でしょ。
何とかなる。……多分。
彼女は、本屋さんの袋の中から 1冊の雑誌みたいなのを取り出して 俺に渡した。
「表紙にお願いできますか⁇」
表紙を見て分かった。
これは、今日が発売日の俺の写真集。
よりによって、表紙⁇
こんな経験、したことない。
「はい、頑張ります。」
俺は写真集をベンチの上に置いて、ベンチを机代わりにして サインをした。
「お名前、聞いてもいいですか⁇」
「のぞみ、です。
希望の "希" に "美" しい、って書きます。」
俺は今までで書いた中で1番くらいの勢いで 時間をかけて、丁寧に、サインをした。
「はい、どうぞ。
漢字……合ってますよね⁇」
「はい、合ってます‼︎ありがとうございます‼︎」
漢字苦手だけど、流石に名前を間違えたらヤバいよな。
うん、漢字 勉強しよう。



