もう、この学園に入ってから4年が経とうとしている。
最初は確か…スカウトだった様な………。
中学校3年生の時。ピアノに通っていた小6の弟を迎えに行くため練習室に行ったのだがなかなか来ない為近くにあったピアノで少し遊んでいた。ピアノは昔に1年くらい習っていただけなのだが、そこに来たのは今の学園長。橘 孝蔵。
「君は中学生カネ?」
「はっ…はい。弟のピアノを迎えに来たのですが……なんでしょう?」
「うぅーむ。………君!!私の学園に入りなサァーイ!!」
「……………!!はっ?はいぃー!?」
勿論最初は何言ってんだコイツ?と思ったが彼は本気であった。
「だーかーらぁー。君の弾く音色は、まーるでぇー。ハープの様に美しく透 き通っていて綺麗ですぅ。だーからー、モッタイ無いデスよ!!才能が。」
「えぇ。でも…国立学園とかはー。私の家庭、貧乏なんで……」
「んじゃー、入ってくれた代わりに学費を私が払いまぁーす。これでどうでショウ?」
そんな話あるか!!と疑っても答えは変わらない。
騙されているのか?と思ったがそれは大きな間違えだったのだ。
何だかんだ色々あって入ることになって勿論学費はタダにしてもらっし、オーディションも無事合格してこの学園『橘響学園』に入れた。
そして、何よりもこの学園の最も1番とも言える行事。『橘響音楽祭』では色々な事務所からのスカウトが来ると言われる絶好のチャンスなのだ。学園長も自分の事務所は持っている為そっちの事務所所属でもありなのだ。
私は作曲家志望のコースだからアイドルとグループを組まないといけない。

今、私はそのグループのメンバーを探している途中。
皆は大体決まっているのだが……私はと言うと。この通り1人
活発でも無ければ美人でもない。ただただあるのは作曲の能力しか取り柄がないのだ。それに黒いストレートにつり目の一重。これぞ私『梶川 蘭子』だ。
そして1人ずば抜けた歌手能力と顔の持ち主がこの学園にいる『沢野 春樹』
焦げ茶色の髪の毛にパッチリ二重。スッキリとした輪郭は整い過ぎだ。
学園内では様付けで呼ばれたりなどのかなりの王子様的存在だ。この時期になると女子が喚くのもおかしくはない。
そんな毎日の様に告白されている彼と違って私は…………。
「そろそろ見つけないと…事務所所属は出来なくなるし、んー!!ピアノ演奏だけはレベルが高いし受かるかどうか不安だな……」
悩んでるところに来たのは、沢野だった。
「よっ、梶川さん。まだ悩んでんの?そんなにずば抜けた才能持って、来ない方が可笑しいよねー?」
笑う沢野を見ながら。ずば抜けた才能?それはあんただろ!!と思ったが、
「んー。きっと私と組みたくないんだろうね」
苦笑いをして答えた。
「へぇー。じゃー…俺と組む?」
「へっ…………………?えぇぇぇぇ!!!!!!」
学園全員の女子を敵と見なす発言だった。
「だだだだだだ、だって!!私よりも可愛い子なんて山程いるし才能なんて関係無いよ!!沢野くんは…嫌われて欲しくないし、」
「嫌われる?」
「うっ…うん。私結構女子から嫌われてるんだ。ほら…なんか結構私、浮いてるじゃん?だから一緒にいると沢野くんも嫌われちゃうかと思って…」
「梶川さんは優しいね、別にそんなの気にしないよ?」
「やっぱり、沢野くんは心が広いね。想像通りの人だよ」
照れ隠しをしながらも話を続ける。
「私はいいけど1回沢野くんはじっくり考えてみて、それでも良かったらグループの件考えてみよっかなぁー?」
「マジ!?よっしゃァー!!」
飛び跳ねた所を隣に誰かがすっと通りかかった気がした……



クラスに入ると…一斉にクラスの女子皆がふと私の事を睨みつけてきた。
「………っ。どうかした?何か付いてる?」
「はぁ?あんたさっきあんな図々しい事して忘れたと言うの!?」
最初に返してきたのは学園のトップリーダーとも言える星野財閥の次女。
『星野 伊緒』だった。彼女は薄い栗色の髪で長く先だけカールしている。いかにもお嬢様とかしか言えない。甘いルックスに比べて性格はドブのようだ。
「はぁ?って私が聞きたいよ、急に何か言われても………。」
「つーかあんた昨日沢野くんと話してたらしいじゃん。超絶ウケる」
次に来たのはクールで口調が結構サドなドS女。『水樹 杏』
真ん中分けの黒髪に睨みつけているような目。何故かそれが男子からは好評らしい。
「話してたけど…それが何かあったの?」
「あんたみたいなクズの分際が伊緒とアタシを差し置いて沢野と話してたんでしょ?だから話すなって何回も前から言ってたじゃんボケぇ」
「それは……私が話しかけたんじゃなくて沢野くんから…………」
「うっさいわね、図々しい顔しやがって嘘つくんじゃねーよ、クソカス!!」
そしたら後ろから男子達が、
「俺知ってる。昨日春樹から確かに蘭子に話し掛けてた」
「俺様も見た見た!!いつまで星野グループは蘭子をイジメんか…」
「なんだよ!!ゴミは黙ってろし!!ムカデみたいな顔してこっち見てんじゃねーよ、そのキモい顔が夢に出てくっから。ムカデの分際でコイツをかばっても
意味ねぇーんだよクソ共が」
どれだけ水樹は口が達者なのか…星野は本当に財閥の娘なのか
「なんでもありませぇーん」
「ムカデはお前の髪だろっつーの。」
その瞬間水樹がすっと出したハサミが机に刺さった
「うっせーって言ってんだろ?次何か言ったらハサミでもハサミじゃなくてのてめぇの口にムカデ縫いつけてやっかんな!?」
「口が達者だなぁー、勝手にしろ。俺様はそんなんでびびんねーし」
「…………………っち。ブサイク男め」
俺様と言っている『桐乃 愛理』は学園でも沢野と仲が良くなんでも1位2位を争う仲だ。
「うぜぇ」
「杏、落ち着いて。気にすんじゃないよ」
「っち。伊緒からも何か言ってやれっつーの。超絶キモいわ」
「分かったから………………あんたら。私達はもう行くけど次にそんなことしたら…いいね?覚悟しとけよ」
高々に笑い教室を去っていった。

自分も教室を出ると壁にもたれ掛かっていたのは沢野だった。
「おぉーす、梶川さん。元気ないけど…?あぁ!!俺の事春樹って呼んで!!」
「…………」
沢野くんには悪いけど無視しないと
私は弱い
強くなりたい
「ねぇ、梶川さん?…………泣いてるの」
「らっ………蘭子でっ……いい。からっ。早くいっ、行って」
「こんなんじゃ行けないよ。ちょっとこっち来て」
走って連れてかれたのは校門を抜け出して右に曲がった所の細い路地にある公園だった
「何があったかちゃんと俺に話して?」
「………春樹!!蘭子!!」
「桐乃!?どうしてここに」
「蘭子が泣いてるの見つけて来た。俺様が事情話すから蘭子のことはじっとさせてやって」
こんな所が見つかったら…きっと桐乃は分かって言ってくれたんだろ。

「………。そうだったんだな」
「蘭子?大丈夫?……ははっ、気にすんなよ」
「いいから………ほっといてよ」
このまままた見られたりしたら………怖い。怖い。怖い。

次巻に続く