「なんだ大輝。ハルの時は何も言わなかったくせに。」
ハルと聞いて俺は自分の顔が強張ったのを感じた。
「ハルはいいんだ。あいつは俺も認めてる。だけどそれ以外はダメだ。」
「だから指図は受けないってば。」
麻耶の不満そうな顔に少し笑ってから、父親は俺に握手を求めて手を差し出した。
「麻耶が家にまで連れてくるってことは俺達がどういう人種なのか知ってるんだろう?」
「はい。今さっき教えてもらいました。」
俺が手を差し出すと父親はぐっと俺の手を握った。
「……それでも仲良くしてやってくれると嬉しい。
俺は五十嵐 奏だ。俺が19の時に大輝が生まれたからもう37になるかな。」
「親父も歳とったよな。」
冷蔵庫からジュースを出してきた大輝がそう言うと父親はため息をついた。
「俺が歳をとればとるほどお前も生意気になる。それで、君はなんていう名前なんだ?」
「あ、俺は吉原 由貴って言います。麻耶と同じ高校の2年です。」
「おお、じゃあユキ君って呼ぼう。」
麻耶と同じユキという呼び方に俺が顔をしかめたのを見て父親はハハハと声をあげて笑った。
「すっごい嫌そうな顔。まぁ、俺のことはなんと呼んでくれても構わないよ。」
「組のみんなは「兄貴」か「奏さん」って呼んでるわよ。」
俺は突然背後から聞こえた声に振り返った。
俺が1番扉の近くにいたから、すぐ後ろには扉
そこにいてニコッと笑っていたのは、父親と同じような真っ黒のスーツを着た女の人


