俺達が階段を降りて2階に向かうと、麻耶の楽しそうな声とそれに笑う男性の声が聞こえた。
「……親父さんの声?」
「ああ。俺も久々に聞いたよ。……3ヶ月ぶりぐらい。」
大輝が声のする部屋の扉を開くとそこには麻耶ともう1人、背の高い男性がいた。
帰ってきたばかりでまだ真っ黒なスーツの上に薄手のコートを着ている。
俺は驚いてただ目を向けることしか出来なかった。
麻耶達の父親は俺の想像とはだいぶ違っていた。
高校生の子供が2人もいるにはとても若くて、全然暴力団のトップには見えない。
「親父、お帰り。」
「おお大輝か。またお前背が伸びたんじゃないか?」
父親はこっちを見てニコッと笑った。
その顔があまりにも優しくて、俺はなんだか拍子抜けしてしまった。
優しそうな好青年、そんな印象だった。
さっきあんなに緊張したのに……
「それと、麻耶のお客さん。」
それでも油断は大敵だ、とまた背筋を伸ばした俺に思いがけず言葉が飛んできた。
「お邪魔してます。」
それに合わせて俺は慌てて頭を下げる。
「おお、学校の友達か?それとも新しい彼氏か?」
「っはぁぁぁぁあ!?」
それに反応したのは麻耶でも俺でもない大輝だった。
「彼氏だぁ?俺は絶対認めないぞ!」
「先輩は彼氏じゃないし、そうだったとしても大輝の指図は受けませんよ~だ!」
麻耶の言葉に父親は声を出して笑った。


