「…俺達のグループは、ただの集まりだけどさ。
暴力団がバックにいる不良グループなんていかにも存在しそうだし。
俺は別にどうも思わない。」
麻耶は、俺の好きな人だから。
そう自分で自覚した日を思い出して俺は少し笑ってしまった。
人を好きになったのは麻耶が初めて。
それが俺には届かない人だと分かっていたがそれでも今、目の前にいる。
「……ありがとう、ございます。」
バタバタバタバタ!
麻耶の小さな声が俺の耳に届くのと同時に慌てたように階段を駆け上がってくる音が聞こえて俺達は顔を上げた。
「……大輝ですね。」
確かに、今この家にいるのは俺と麻耶以外に大輝だけだ。
麻耶の言った通り、しばらくして顔を見せたのは息を切らした大輝だった。
「はぁ、か、帰ってきたぜ。話は終わったか?」
「終わってなくても中断するしかないでしょ?」
そんな言葉に反して麻耶の顔は輝いていた。
「2人とも帰ってきたの?」
「ああ。今は2階にいる。」
そんな大輝の言葉を聞いて麻耶はすごい速さで階段を降りて行った。
取り残された俺と大輝は自然に顔を見合わせた。
「……俺は、ここにいてもいいのか?」
「いいんじゃねぇか?他人が家に入ってきたからって怒ったりする連中じゃねぇよ。」
今さっき両親は暴力団と聞いたばかりなこともあって、俺は自然に背筋が伸びるのを感じた。
いくら怒らないと言っても緊張するなという方が無茶な話だ。


