麻耶と大輝の両親が何の仕事をしているのかは知らないけど、こんな豪邸に住んでるんだからすごい仕事なのは想像していた。




いつも忙しくて家にいないっていうのは聞いていたから、俺が想像したのは官僚とか弁護士とかそういうもの。




それに加え、麻耶の笑顔を見ると両親をかなり慕っているらしい。




「なんで?しばらく帰ってこないって言ってたのに!」




「知らねぇよ。とにかく、親父とお袋にバレちゃまずい。帰ってくるまでにだ。分かったな。」




「うん。ありがと。」




麻耶にお礼を言われて大輝は諦めたようにため息をついた。




「……話ちまう価値のある奴か?そいつは。」




「先輩は良い人だよ。」




「良い人とかは関係ないんだよ。」




大輝はそう言いながらも本気で止めるつもりはないらしく、何も言えずにただ黙ってる俺を見てまたため息をついた。




「まぁいい。」




麻耶が俺に先に階段を上るように促し、俺は登り始めた。




「麻耶。」




大輝の声が聞こえて俺も振り向いた。



大輝は何かを麻耶に耳打ちし、麻耶はそれを表情1つ変えずに聞いていた。




俺には当然何を言っているのか分からないわけで




『お前と俺達家族の関係は、絶対に話すな。……もちろん、ハルとお前のことも。』




俺が苗字の違うこの複雑な家族の関係を知ったのは、もう少し経ってからだった。