「だから、集まるなら他の所にして欲しいんです。ここ、結構いいとこだからみんな来たいって思ってるんですよ。」



確かに、この中庭はいいところだと思う。



木や花がたくさんあって、真ん中には枯れてはいるけど噴水がある。




「タバコも、吸うなら捨ててください。臭うんで。」



「に、臭う……」




慌ててあたりの匂いをかいだ俺に、女子は「あはは」とちょっと声をあげて笑った。




今までずっと無表情だったのに突然笑うから



俺は何も言えずじっと見つめてしまった。




「冗談ですよ。面白い人ですね!」




「うるせーよ。黙れ。」




女子はクスクス笑っていたが、しばらくするともう一度頭を下げて走って行ってしまった。



その途端、突然あたりが静かになって俺は違和感を覚える。




「…もうちょっと。」




もうちょっとサボっていこう



さっきの女子のせいで何かが狂って教室に戻る気分になれなかった。




そういえば、名前とか学年とか最後まで分からなかった。



敬語だったから、たぶん1年


青ネクタイだから特進



それしか思いつくことがなくて、俺はため息をついた。