「あー、その教師見たことある。」
「ありますか!今何歳なんでしょうね、あのおじいちゃん。とっくに定年過ぎてると思うんだけどなぁ。」
俺はプリントから顔を上げて麻耶を見た。
麻耶は意外と不器用なみたいで、プリントをまとめるのに苦労してる。
それがちょっとその…かわいい…なんて
でもその背後の教師達の目が、まだ俺には気になった。
『あの子特進科の西村さんよね?』
『特進科でもトップの子と、問題児の吉原。いったいどんな関係なんでしょうね。』
『悪い影響がないといいんですけど…』
麻耶にも聞こえてないはずがないのに
「先輩?どうかしました?」
麻耶は俺を見て笑った。
「…いや。」
麻耶は俺なんかとは違う。
「じゃあ早く終わらしちゃいましょ!」
麻耶の笑顔が眩しかった。
「…おう。」
俺達のことに、麻耶を巻き込んではいけない。
中庭から場所を移すだけでいいんなら、それでもいいと思った。


