「……だけど、あの家は………」




祐哉の呟くような声に、俺は首を傾げた。




「あ?何か麻耶のこと知ってんのかよ?」




あの家って、『五十嵐』家のことか?




「まぁいいや。」




祐哉はそう言うと走り出した。




バイクは大きなエンジン音を響かせて、住宅地を抜けて行く。




「どーする?こっからどっか行く?」




「んー、今日は疲れた。帰ろーぜ。」




「そーだな。
女の子慣れしてないユキちゃんは疲れちゃったか☆」




「お前、突き落とすぞ。」




俺が睨むと、祐哉は声をあげて笑った。




「やってみろよ!俺を突き落としてお前も無事でいられたらの話だけどな。」




こいつ、ムカつく……



だけどそれはいつものことで




俺達は2人揃って笑うと、そのまま夜の街を突っ切って行った。




こうやっている時が、1番自然な自分でいられる。



1番楽で、大切な俺達だけの時間だった。