「いないと思う。」
「……そうですか。」
「家まで、送ってくぜ。たまたま会ったから、あれだし。」
麻耶の表情に少し違和感は持ったものの、俺は沈黙がくるのが怖かった。
だからって会ったばかりのやつに送ってくっていうのも変だと思ったけど、とっさに言ってしまった手前もう引けなかった。
集まりに特進がいないなら共通の話題もないし、麻耶から離れる時間も早くなる。
こんなこと思ったのは初めてだけど、それは嫌だというか、もう少し話していたいというか……
「大丈夫ですよ。家ここからすぐですし。」
今話してて初めて麻耶が笑った。
「いや、でももう遅いし、だから……」
「先輩優しいですね?あんまり優しくしすぎると、好きでもない女子に勘違いされますよ。」
麻耶は前みたいにクスクス笑った。
そこまで拒む理由もないらしく、麻耶が歩き出したから俺も隣に並んで歩き出した。
「…特進科ってやっぱり勉強大変なのか?」
「うーん…普通科の授業を受けたことがないので何とも言えないです。」
特進科と俺達普通科は、偏差値も大幅に違えば教師陣や校舎も別
学校の話題では共通点0か……
「先輩が先輩ってことは分かるんですけど、何年生なんですか?」
「ん?ああ、俺は2年。
吉原 ゆ……」
「ゆ……?」


