麻耶はじっと遠くを見つめていた。
どこかぼーっとしているようにも見えるけど、じっと何かを睨んでるようにも見える。
「ハルは両親から育児放棄を受けてて、自分で働いて生活費を稼いでたらしいんですけどそれも限界があって。
それを見かねた大輝が家に引っ張り込んだんですよ。
家を出てからはバイトで稼いでるって大輝が言ってました。」
麻耶はそこまで言ってため息をついた。
「でも学費だけはまだお父さんが払い続けてます。
ハルは嫌がったらしいんですけどね。
だけどそうでもしないとハル、学校辞めちゃうから。」
俺もそう思った。
自分の家にいるとして家賃は稼がないでいいとしても、生活していくだけにはそれなりに働かないといけないだろう。
そんな中で学校に行くなんて俺にはきっと無理だ。
麻耶はそこまで話してため息をつくとまた弁当を食べ始めた。
ハルの話をするのは、麻耶には辛いことだろうってのは俺にも分かる。
それでも、知りたいんだ
「ごめんな。」
「いいえ。」
麻耶は少し笑って首を振った。
「でもこんなに自分のこととかハルのこととか、話したのは先輩が初めてです。誰にも内緒ですよ。」
こんな時なのに、初めてってことにちょっと嬉しいとか思ってる自分がいる。