不良の俺とクールな後輩


俺はそれから麻耶の家族に飯をご馳走になりながらなぜか大輝とハルの昔話を聞かされていた。





「ハルはね、両親が全く育児に興味のない人達でね。
ハル自身幼い頃は飯も食べさせてもらえないことも多かったらしい。

そのうち夜出歩くようになって、大輝と仲良くなってからはよくこの家に出入りしてね。
一時一緒に住んでいたこともあるんだよ。」





食後のコーヒーを飲んで奏さんはため息をついた。




佳奈子さんと麻耶は2人でどっかに行ってしまって食卓には奏さんと話を聞く俺とゲームをしている大輝の3人しかいない。




「あの時は楽しかったな〜」




大輝が顔も上げずに言うと奏さんは笑顔で頷いた。




「今もちょっとだけ学費を援助してるけど、あいつも立派になったもんだ。
実質息子みたいなものだけどね。

大輝よりよっぽどしっかりしてる。」




大輝が「けっ」と言うのを聞いて俺は「ハル」のことを思い出した。




裕也を殴っていたあの黒髪がハルで間違いないなら、俺はハルをそんなしっかりした人間だとは思えなかった。




そもそもあの夕方の時間に制服すら着ていなかったんだから、学校にも行ってないのだろう。




だけど奏さんと大輝の中のハルはそれとは少し違うようだった。





「あいつは頭がいいからな。
もし団に入らなかったとしてもあいつならそれなりの暮らしができるだろう。

ただ人を愛することは、もう叶わないかもしれないな。」




ここまできて言いすぎたと思ったらしく、奏さんは少し顔をしかめてからまたコーヒーを飲んだ。




俺は「もう人を愛することは叶わない」と聞いて気にならないわけがなかった。




元彼の話をするときの麻耶はとても悲しげで冷たく見えたし、2人の間に家族も巻き込んだ何かがあったのは確かだった。