「まだ10時半だぜ。」
裕哉は公園にあった時計を見てため息をついた。
「神崎先輩怒ってるだろーなぁ。せっかくお前が来たと思ったらすぐに警官に見つかるなんてさ。」
「…まぁ、そこはなんとか我慢してもらう。」
なんで神崎先輩がそんなに俺のことを気に入ってくれているのかはよく分からないけど
今までまともに人に好かれることなんてなかったから、地味に嬉しかったりする。
公園のすぐ横には高いマンションがあって
たぶん塾帰りの中学生とか高校生が、何人か中に入って行ってるのが見えた。
「どーするっかなぁ。」
裕哉が携帯を開いたとき、俺の目はそのマンションに釘付けになった。
「お、神崎先輩だ。」
電話がかかってきたようで、「はいはーい!」と軽い声で裕哉は返事をした。
「ユキですか?ここに居ますよ~」
でも俺には電話の相手とか、誰でも良かった。
ただ、じっとマンションの入口を見つめていた。


