ハイドアンドシーク・ラブ

1周、2周………


汗が頬を伝う。

日光が痛い。


案外この暑さや苦しさが好きだったり。




「ラス何周?」



遥南先輩が聞いてくる。



そうですねぇ、と考えながら、「ラス2ですね」と答えた。





視界の隅に移ったのは日陰で休む暁くん。


既にノルマを終えたみたい。





「……速いな」





今更のように呟いた。



今まで同じペースで黙々と走ってきた私と遥南先輩。





「え、みっつ速いよ!?なんでスピード上げたの!」





遥南先輩の声が聞こえる。



ラス2周。






さっさと終わらせて暁くんと話をしよう。




小学校は何部だったのかな。

バレー経験あんのかな。

ポジの希望はどこだろ。

委員会入ったかな。

成績、いいのかな。





気が付くと、2周走り終えていた。



後ろからは、遥南先輩。






「ちょ、みっつ、ペース上げやがって」


「とか言いながらあんまり疲れてないでしょ?」


「ま、私天才だからね」




先輩のジョークを軽く受け流して、日陰へ向かう。





「暁くん」





背中にそう呟いた途端、暁くんは勢いよく振り返った。