教材を持って教室に入った時、ちょうどチャイムが鳴った。 着席して隣の席を見ると、案の定大翔はいなかった。 __行動なら簡単に読めるように。 好きな人がいるなんて私、全然知らなかった。 私に教えてくれなかったのも、どっちも悔しい。 だけど、ともに沸きわがる、この切ない感情はいったいなに? 私にとって、ある意味目の前に広がる数式よりも難しかった。 __大翔のバカ……。 声に出すわけにもいかず、私は唇だけを動かした。