好きと嫌いは紙一重

「琉斗、琉斗ってば…!」






「…明梨ごめん。俺ずっと黙って見てたけど、こればっかりは黙ってられない。」






「どうして。」







「明梨泣いてた。明梨を悲しませるやつに明梨はやらない。」






「琉斗…?」







琉斗はずっと下を向いてたけど、泣いてるみたいだった。






「あの、琉斗、」







「…俺ずっと明梨のこと好きだったんだ。明梨は気づいなかったけど、ずっと好きだった。」






「…。」





「付き合いたいとかそんなのはなくて、ただ明梨が幸せになってくれればよかった。なのに、アイツは…」







「琉斗、あの人はまだ彼女って決まったわけじゃ…」






「それでも、明梨が泣くのは耐えられなかった。ごめんね。」






琉斗はそう言って、家に帰っていった。





琉斗は考えてみれば、昔から心配症で、ずっと私を見ててくれた。

危ないことをしようとすれば、女の子だからやめなって言ってくれた。

私がさみしい時はずっとそばにいてくれた。



それなのに、私はその気持ちに気づけなかった。






「…どうすれば。」







-ピロリン-



「…もしもし。」






「神村くん?」






「…今日はほんとにごめん。」






「大丈夫だよ。…気にしてないよ。」






「…あの、杏は、」






「…神村くん、私達付き合ってるわけじゃないからさ、言いにくいことは言わなくていいと思うんだ。」






「…市原?」






「…ちょっと、距離置きたい。」







私は部屋にボーッと座ってた。
さっきの電話からは1時間が経っていた。




神村くんは、わかった。とだけ言って電話を切った。





距離を置いてどうしたいのか自分でもわからない。
ホントは神村くんの口から、彼女なんだって言われるのが怖いだけなのかもしれない。
あの二人の仲がこの間に縮まっているかもしれない。



だけど私はどうしても、神村くんと言葉を交わす気分にはなれなかった。