「なんでって…、覚えてないの?」







「覚える…?なにを?」








「はぁ〜…。ここじゃあれだし、場所変えよう。」







そう言って、学校の近くの公園に移動した。






「あの、覚えるってなに?」





「あれは中3の受験の日だった。」






受験の日は雨で、神村くんは傘を持っていなかった。
学校から帰るとき、それに困ってたとき、私が傘を差し出したらしい。
私は琉斗と帰るからって。




「それから、その傘、うちにずっとあってさ。高校でもしその子を見つけたら傘を貸すって決めてた。」





「だけど、私のこと嫌いだって…」






「嫌いだよ。いつも加島に頼りきってるし。」






バッサリという彼の言葉がグサリと心に刺さる。




「琉斗は…」





「いつも思ってた。俺が助けてもらった人はこんなにも弱虫だったのか。って。」





「弱虫…。私は強くなんてないよ。」





「僕は…、なんでもない。話しすぎたね。そろそろ帰るよ。」





「え、あの、」





「風邪引かないでよね。」






私を残して彼は行ってしまった。