電車は、いつも、わたしが降りる駅を通り越して、どんどん進んでいく。 見慣れた風景がなくなって、知らない景色が顔を見せる。 住宅街ばかりだった風景に少しずつ木々が追加され、 いつしか見晴らしのよい景色が広がる。 こんなところまで来たことがないわたしは初めて見る景色に目移りしていた。 えっ? 海……? 短いトンネルを抜けると、電車が海岸線沿いを走り始めていた。 「降りるぞ」 アナウンスと共に竜也が立ち上がった。