「いいよねー井浦くんみたいな幼馴染がいる南(ミナミ)」
お昼休み、食堂でラーメンを食べていると正面にいる友達、浅川鈴(アサカワ スズ)が突然そう言った。
「……なに、急に」
「だって、イケメンで頭も良くてサッカー部のエースでしょ?」
「……背ちっちゃいよ」
「んなの、マイナスにならないくらいだって。それに、まだ中学生なんだから」
鈴の言葉に私は何も言わずラーメンをすする。
冬であるこの時期に食べるラーメンはとてもお箸が進み、私はすぐに完食した。
「でも中三で153だよ? 鈴より5cmも下なんだよ?」
「私は、どちらかというと将来が気になるだけで、恋愛対象じゃないし。別に気にしなーい」
「……そう」
「それより、あんたはどうなのさ。あんなかっこいい幼馴染いて、なんも感じないの?」
「感じるどころか、他の男がかっこよく見えなくて感度が落ちて、困り果ててる」
私の幼馴染は、10人がすれ違ったら10人が振り返るくらいかっこよく、中学3年間テストでは主席から落ちたことがないという、腹が立つくらいの才能の持ち主。
それに比べ、私は10人とすれ違えば1くらいは振り返ってくれるかなと思うくらい、むしろ振り返って欲しいという希望してしまうくらいのルックスで、テストではどれも50位台。
とにかく平凡な私と、とにかく完璧な淳。
比べられることなんて日常茶飯事だ。