幼馴染なんて、決していいもんじゃない。
友達はみんな羨ましいっていうけど、そんなのは恋愛感情がないからそう思うだけで。

幼馴染に恋しても、なんも楽しくない。

「ねえ、淳(ジュン)、教科書見せて?」

「は?」

授業中、コソッと隣の席に話しかけるけど、素っ気ない声。

「えと、忘れちゃって……」

「何回目だよ、ドアホ」

そう言いながらも、ちゃんと見せてくれる彼、井浦淳(イウラ ジュン)。
みんなが羨ましがる、わたしの幼馴染。

「この数式を、浜野」

「は、はい!」

名前を呼ばれ、立ち上がるけど、黒板に書かれている数式はさっぱり。
戸惑っていると、隣から腕が伸びてきて、机の上に雑に文字が書かれる。

「X=5……?」

「よし」

私はほっとして、席に座り「ありがと」と言う。
すると、隣から「バーカ」という声が返ってきて。

そんな言葉に、私は少し口元があがり、そっとノートで隠した。