それに、最近は村の人のお手伝いをよくしている。

 魔術が必要なことをメインに、よくお願いされるようになった。

 軍人が訪ねてきていたことは村では周知の事実だったし、私も魔術の訓練になるから、と無償で可能な限り引き受けるようにしていた。

 そうしたら、村の大人にまで『クレアは天使のように優しいねぇ』なんていうものだから、村では子供から大人まで天使=私という図式が出来上がっていた。

 私には、それがなんだかくすぐったくて、こそばゆくて。

 けれどなによりも、ショウと一緒にいられる時間が、嬉しかったんだ。


「──よし」


 ゆっくりと失速し、地面に軽やかに降り立つ。

 すると、背中の翼は、じょじょに翼から形を変え、“ショウ”になる。

 ショウは、後ろから覆い被さるようにして私の身体に手を回した状態で、嬉しそうに微笑んだ。


「なかなかうまくなってきたね、オレを変化させるのが」

「そう?やっぱり空を飛ぶのは気持ちいいね。ショウのおかげで安心して飛べるの」


 嬉しそうに微笑んだショウは髪をかきあげるフリをして、耳たぶを触る。

 ショウは普段、鷹の姿ではなく、人間の姿をしている。

 術者の魔力量が多くないと、人型は保つ事は難しく、使い魔を人型にさせる魔術師はほとんどいない。

 一度魔力の限界が知りたくて試してみたところ、出来てしまったので定期的にこうやって人型になってもらっていた。

 外ハネした、鷹の姿のときと同じなめらかな榛色の髪色は、太陽の光を受けて、キラキラと輝いている。

 使い魔の象徴、琥珀色の目は人型になっても変わらず、切れ長で瞳孔が細長くて、男らしさをより強調させている。


「クレアは、本当に軍隊に入るのかい?」

「ええ」

「両親に言われたから?」

「……ええ」


 なぜか、声が小さくなってしまう。

 どうしてだろう。

 なんで、胸をはって言えないの?

 私は魔力の量が多くて訓練しなきゃいけない、けれど学校に行くお金もないから軍隊に入るって。

 ショウは落ち着いた声音で、言葉を紡ぐ。


「クレアは、本当に“入りたい”の?」


 ドクン、と心臓が握り潰された気がした。