すると……まるで私の言葉がわかったかのように、鷹は大きな翼を広げ、ふわりと舞った。

 そして、私の伸ばした手に止まった。


「よろしくね、私はクレアよ」


 気づけば、鷹に話しかけていた。

 何かが通じ合えたような気がしたから。

 ようやく自分自身が満ち足りた、欠けた半身が戻ってきた、そんな感覚。

 意識がどこかふわついた状態で言葉を紡ぐ。


「あなたは?」


 鷹は、一度首を傾げ、瞬きをした。

 
〈──オレは、名前がない〉


 脳内に、声が響いた。

 しっとりとした、艶っぽいけれど、どこか少年みを漂わせる声。


「なら……ショウ……“ショウ”は?」


 不意に頭に浮かんだ名前。

 ショウは“翔”。

 大空に飛ぶという意味もある。

 あの大きな翼は、空を裂いて、どんな逆風も逆らってどこまでも飛んでいけそうだから。