「ぐ、るる……」
「っっ……!」
生まれて初めて見る、頭を三つ持つバケモノ。
ひとつは獰猛な虎、ひとつは鋭いくちばしを持つ鷲、もう一つはチロチロと赤い舌を出し入れする蛇。
蛇の口もとから垂れる紫色の液体は、地面に落ちるなり地面はしゅうしゅうと音を立てて、溶けはじめた。
毒だ……とても強力な。
そのバケモノの虎と鷲のくちばしと、羽根と毛皮には、べっとりと赤い液体が凝固していた。
「コィつが、噂ノ魔術師か……?」
幾重にも重なって聞こえる声は、気分をおかしくする。
「そうですとも」
グルル、と低く喉を鳴らし近くにいた魔法使いをその鋭い目で睨んだ虎の頭に、その魔法使いはペコペコと頷く。
虎の口から覗く牙は、その魔法使いの頭ほどもあり、一口で魔法使いはかじられてしまいそうだ。
「……確かニ、魔力ノ匂ぃガするナ。美味そうな匂ィダ……」
鷲の頭が、こちらに頭を伸ばしてきたけれど、身動きがとっさに取れなかった。