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「紗桜!」

「こうやって直接会うのは久しぶりね、麻央」


 紗桜から連絡があった約束の2日後、あたしとカカオは、親交大使としてルクティアに招待されるため、オスガリアを訪れていた。

 あれからカカオに話の内容を伝えると、すぐさま予定が組み替えられ、こちらが最優先事項だと話を回してくれたらしい。

 それからは目まぐるしかった。

 先ほど言ったカカオのスケジュール調整に加え、失礼のないような礼服の準備、また土産品まで、この1日で全て用意してくれた城の者たちに拍手喝采を贈りたい。

 あたしもカカオも、ウェズリアで正装である黒の軍服を着ている。

 普段の訓練用とは違って豪華で高級に、けれど毳毳しすぎない様に上品に上手く誂えられたもので、柔らかな黒地の布がたっぷりと使われており、ぱっと見ではわからないかそこには細やかな刺繍が施されている。

 手足もタイツと手袋に覆われて肌面積が極端に少ないデザインだ。

 外交、しかも誰も知らない国に行くとあって、緊張感は計り知れないものがあった。

 紗桜との挨拶を済ませると、カカオと紗桜も互いに挨拶を交わす。


「陛下。ご無沙汰しております」

「こちらこそ。今回の件、何とお礼を申したら良いか……」

「困ったときはお互い様ですもの。礼には及びませんわ。私もルクティアへはいずれ伺いたいと思っていたところだから」


 あくまで今回は公式な外交であるため、カカオと紗桜はきちんと立場を弁えて必要な挨拶を済ませて、調書にサインをする。

 ルクティアに訪れたとき、何かあっても保証はできないということ。

 それを了承した上で、紗桜に助力を乞うこと。

 形式とはなんとも堅苦しくめんどくさいもので、単なる口約束では済ませてくれないらしい。

 互いに国の長、挙動全てに全国民の命がかかっているといっても過言ではない。
 

「さて、面倒な手続きも終わったことだし、そろそろ迎えがくるはずだけれど」


 召使たちを全て下がらせ、王座で足を組む紗桜は太陽の光がまるでスポットライトの様に照らし出していて、なんとも荘厳で美しいと思ってしまう。

 こんな美しいものたちばかりがいる場所へとこれから行くんだ。

 ううん、これはあたしの想像であって真実かはわからない。

 それを確かめにこれからいくのだ。