あたしがこの世界に来て半年、アイム(地球でいう秋。約400日あるサーチェルの暦の四分の一を占める)が終わろうとしていた。


「それにしても」


 一通りの仕事を終えたクコが窓の外を見やった。


「ウェズリアは比較的、過ごしやすい天候を一年中保っているはずですが、最近晴れが続いていますね。あまりにもこの天候が続くようなら王が天候を操って下さると思いますが……」


 この国の王は代々王から王へと伝承されてきた特別な魔力をいくつも有している。

 そのうちの一つがこれ、国の天候を操る能力だ。

 この国の中央に鎮座する〈千年霊木〉

 ウェズリアに生きとし生けるもの全ての魔力に通じている〈千年霊木〉の力を遥か昔の王の先祖が分け与えられた故に扱える能力らしい。

 しかし、ただの人間が天候を自由に操ることは、この世の理を歪めることになってしまう。

 本当に困窮した場合のみ、発揮される能力と思って間違いないだろう。


「このままでは、作物が育つか心配ですね」

「そうだね、川の干上がりとかも心配だね」


 魔法が扱えるあたしたちは水を出す事ができるといえど、自然の雨は空からの恵み物。

 自然の生き物たちにとっては命の源であることに変わりはなかった。