でも実際の現実はあまりにもひどいものだった。
仕事が疲れている時、仕事がうまくいかなかった時、イライラしている時。お父さんはいつだって私達小さい兄妹に当たってきた。
その度に兄は『大丈夫、大丈夫だよ』と言ってくれていた。たった3つしか違わない兄は、随分と大人だった。
お世辞にも明るくて活発な子だなんて言えないだろう。
小さい頃に愛情が欠落していると、そういうものを与えるのも、受け取るのも怖がるようになるらしい。
どうやら私と兄はそういう類で、【愛情】というものに酷く飢えていて、酷く欠落していた。
それから、私達家族は一つの個人として生活するようになった。いるのが当たり前で、いるのが普通。ただそこにいるだけのもの。そこから何かを得ようとしたり、失ったりはしない。
そういう期待も、行動もしなくなったからだろう。当たり前といえば当たり前だと思う。