今日、この日、私は、生まれて初めて認められた気がした。
『もしかしたら、智より上手いかもね』
『え……?』
その言葉に電流が走った。
私が、兄よりもこれを吹くのがうまくできた?
それは少しだけでも認められたと言うことでいいのだろうか。
『まぁ、今日のところはこれくらいにしとくか。もうこんな時間だし……』
『え?……うわっ』
時刻は6時半近くを回っていた。
随分と早く感じたものだ。
『じゃあ、帰ろうか』
『はい』
多村さんに連れられ、教室をあとにした。
廊下から見える景色は、いつもとは違い、不思議な色をしていて、まだ夏なのにどこか涼しげだった。
とは言え今は夏休み。
夏休みの1日を、朝9時から夜6時まで練習しているとは、関心(上から目線だが)してしまう。