「はい、陽菜罰ゲームー」
「え、ほんとにやるの?」
「当たり前だし。そういう約束じゃん」
「だって…結城さんでしょ?無理無理」



トランプゲームして、罰ゲーム。
こんな高校生のノリだって楽しめちゃう今の時期だけど、その罰ゲームが酷だと嫌になるよね。

私が嫌がる罰ゲーム。
それは、クラスいち…いや、学校いちって言ってもいいくらい地味な女の子に告白すること。

別名、百合の花園なんて呼ばれるこの女子高は、女の子同士の恋愛が普通で、ほとんどの子がそれ目当てで入学してくると言っても過言ではないほど。
顔立ちが整ってる女の子が多くて、かなり有名らしい。

私の前にいる麻衣も、俯瞰で見たら可愛い部類に入るんだと思う。
一緒にいすぎて、そんな感情も沸かないけど。



「ていうかさ、陽菜もう三回負けてんじゃん。チャンス二回あげてんじゃん。やるべきじゃん」
「…だって」
「だってじゃない。…もう、だったら手紙でもいいよ」



とりあえず告白しろ…って。
仕方ないから、無難なラブレターの定型文を携帯で調べて小さい紙に書く。



「ここ、もっと可愛く」
「うるっさいなぁ。文句言うなら麻衣が書けば?」
「どうせならOKされた方が面白いでしょ?まあ、陽菜の告白断るとかないだろうけどね」



教室の隅で本を読む結城さんを少しだけ一瞥する。

目までかかった前髪に、腰まで伸びた髪の毛。
物凄い猫背だし、ほっそい体と異様に白い肌が何か怖い。



「陽菜もさ、女の子が好きだからこの学校に入った訳でしょ?」
「…うん」
「彼女の一人でも作るべきだよ。結城さんに限ったわけじゃないけど」
「うーん…」
「現に毎日のように告白されてるじゃん。陽菜の容姿なら皆寄って集ってくるんだし」
「毎日は言い過ぎ。別に人だって集まって来ないもん」


メモ帳を弄んでいると、勢い余って少しだけ破れてしまった。
どうしよ、まあいいか。