「うぁ!!…た…たすけ……て」

助けを求めて伸ばされた手を私はただ見ることしかできなかった。ただ肩を貸していたのに急に首を噛まれ、肉を食いちぎられる。
恐怖と痛みに耐えられない松末君を私達はただずっと見てるだけ。何を言っても伝われない。何も聞こえない。本当に、ただ見てるだけ。




やがて、助けを求めていたその手は力なく落ちていく。

ムシャムシャ
実に美味しそうに人肉を食べている。
なんて最悪な光景だ。
廊下に鳴り響くその音は決して穏やかなものではなかった。

委員長は尻餅ついているけど、腕の力でゆっくりこちらに近づいている。

その調子だ。

今、教頭は松末君に夢中だ。
このタイミングを利用するしかない。




ガラガラ
「お前らさっきからうるさいぞ。」
そう言って隣のクラスの男子が出てきた。

そして、それに素早く反応した教頭は
隣のクラスの男子が開けたドアに素早くしがみついて思いっきりドアを開けると次の標的としてその男子を食べ始めた。
「「「「「キャアアァァァーーーーーーー!!!」」」」」




まずい。隣のクラスもこっちのクラスもパニックだ。
こっちのクラスも廊下を突っ切って逃げている。

そして、さっき出した悲鳴で、何事かと様子をみにくる生徒がいて邪魔になっている。






「まつす、え君……。なんで?、、なんで死んだの?……ねぇ、なんで…………なんで私を置いていくのよ!!!!」

霧島さん…
泣き叫んでいるのは霧島 里美(きりしま さとみ)松末君の彼女だ。
いや、今では“だった”が正しいのかもしれない。

彼女は本気で彼を愛していた。

それは恋愛なんてまともにしてない私でもわかることだった。



「松末君?……松末君生きてたの!」


え?そんなはずはない!!なにを馬鹿げたこといってるの??だって、確かに彼は…





心臓をむしり取られていたから....