その頃の俺は、人の死というものに現実味を感じていなかった。だから、死ぬことがどれだけのことなのかさっぱりわからなかった




その医者は、俺に


「泣いていても何も変わらない

君が泣くことで救われる人よりも

君が笑うことで救われる人の方が多いと思
わないか?

自分の感情のままに動くんじゃなくて

相手にどうなって欲しいのかをまず考えろ

相手に笑っていて欲しいのなら

まずは自分が笑え」


と言った


その言葉を聞いて俺はただ唖然としていた


でも、その日以来、俺は泣くことをやめた


笑うこと自体、得意ではなかったからその分、あゆむの前で弱いところを見せるのはやめた



あの医者は、言葉一つで俺を変えた


そして、救った


俺もあの医者みたいになりたい


あゆむみたいに病気で苦しむ人達を助けたい


その気持ちが今までの俺を変えた





― ―