栞理が教室へ戻ると、あたしはその場で肩の力を抜いた。


なんだかんだ言ってもあたしは少し怖かったみたいで、自分で笑ってしまった。


このまま教室へ戻るのも嫌で、あたしは近くのトイレに入った。


手には汗が滲んでいて、その汗を洗い流す。


川上君に一目ぼれをした子は一体何人くらいいるんだろう?


きっと、同じクラス内にとどまらないだろう。


そう思うと、鏡に映っている自分を見て小さくため息が出た。


栞理の言う通りあたしなんかじゃ川上君には釣り合わない。


もう少し目が大きくて、もう少し背が高ければ並んだ時に釣り合ったかもしれないのに。


そんな事を考えながら鏡を見ていると、亜耶の姿が鏡に映った。


「亜耶!?」


あたしが勢いよく振り返ると、亜耶は驚いたようにあたしを見た。


登校してきてすぐなのか、亜耶はカバンを持ったままだ。


「ちょっと亜耶昨日は大丈夫だったの?」


そう聞くあたしに亜耶は瞬きを繰り返した。


「そんなに怖い顔をして、どうしたの菜月? 昨日って何かあったの?」