「え……ちょっと、何!?」

ひ、人が鏡の中に?
えっなにこれマジック!?

「こんばんは」

!?!?!?!?
え?しゃ、喋って…どうなってるの!?
ってか今午前9時半……いや、待てよ?

「ホントは仕掛けがあるんでしょー。」

私はそう呟いて、鏡をぺたぺた触った。



「…タネも仕掛けもない…」



「僕は生きてるよ。…鏡の中で。」

こいつがやっとまともなことを言った。

…というか、私は疑問に思った。

「鏡の中で?」


「…うん。僕はそっちの世界に行けない
でも、君もこっちの世界に来られないんだよ」

「へえー……」


「ねえ。名前は?」

名前がわからなければどうしようもない。ひとまずベタな質問をした。

「…ない」

………。


返事に困っている時、後ろから声が聞こえた。

「結衣ちゃん?あのね。りんちゃんが戻って来いって…」

あ…同じ呼び掛け係の七瀬さんだ。



「あ、あの…な、七瀬さん!こいつ見える?」

私は、鏡を指した。


「……な、何が見えるの?」


綺麗な彼女の髪が揺れる。
と、同時に少し複雑な顔をしたような気がした。


ほかの人には、見えないの…?

「結衣ちゃん!先戻るね!」

七瀬さんが遠くの廊下に消える。



「えーと。私もう行くから。終わるまで待ってて!……えーと…カガミ!」



カガミの表情が明るくなった。

カガミとは、なんとなく一諸にいなくちゃいけない気がした。

私は走っていった。
カガミのために急がないと。