中学生の頃に調査会社を使い、母を調べた。あっさり見つかった。

おんぼろのアパートに住んでいて。
パートをしていた。

調査報告で聞いてはいたが、表札が旧姓ではない名前で。

そして、薄いドアの向こう側から小さな子供の泣く声がした。

途端、僕にはそのドアをノックする勇気はなくなる。
急にそのドアが物凄く汚いもののように感じてしまったのだ。

母が男と住んでいる。
その事実は人づてに耳に入るのと、目の当たりにするのとでは大きく違った。
少なくとも十二歳の僕には。

母の女の部分を感じてしまった事への吐き気、僕は置いていったのに、子供を育てている事への嫉妬。

とにかく気分が悪くなり、すぐに帰った。あれから一度もあそこへは行ってない。