私は部屋に入ってすぐ、京極さんに言われた「また屋敷に見たことない人が来た」と、言おうと思っていた。
でも実際言えないってこと、本当はあの屋敷を出た時から分かっていた。
「トキちゃん、合鍵返すね」
別れとかさよならとか言ったら笑われるんじゃないか、私の一方的な思いをトキちゃんはなんとも思っていないだろうから。
そう思って、この一言を選んだ。
「どうして?」
トキちゃんは脱いだジャケットをハンガーに掛けながら、私をじっと見た。
「もう来ないから」
平気な顔をして言ったつもりなんだけど、実際はどうかわかんない。
でも実際言えないってこと、本当はあの屋敷を出た時から分かっていた。
「トキちゃん、合鍵返すね」
別れとかさよならとか言ったら笑われるんじゃないか、私の一方的な思いをトキちゃんはなんとも思っていないだろうから。
そう思って、この一言を選んだ。
「どうして?」
トキちゃんは脱いだジャケットをハンガーに掛けながら、私をじっと見た。
「もう来ないから」
平気な顔をして言ったつもりなんだけど、実際はどうかわかんない。



