…くそっ!また霧かよ!!


こんなもの!


「ゲイルド!!」


魔方陣が現れ、風を起こす。



「…嘘だろ…!?」




視界が開けると、そこには巨大なヘビ…



いや、美しい水龍がいた。



水龍は動かず、じっとこちらを見ていた



外の霧もこいつが原因か!!



それにしても水龍…!


さすが魔王の城!!!


こうでなくっちゃ!!


俺は腰から片手剣を抜く。


あいにく魔法はあまり得意ではないので、初級魔法しか使えない。



だが、剣の腕だけは自国で一番と言っていい。


水龍ぐらい倒せなくてどうする!


剣を持っている腕にグッと力を入れる。


『…お前は、魔王会いに来たのか…?』


突然、声が聞こえた。


「なっ…喋れるのか!…いや、テレパシーのようなものか。

…そうだ!俺は魔王を…各地で魔物を操って被害を出しているサタンを退治しに来た勇者だ!!」


…正直、自分で勇者って言うの少し恥ずかしいよな…


『…魔王はいない。今は、な…』



「いや、魔王はいなくても、その弟子がいると聞いた。そいつと会って話をしたい。

もし噂通りの魔王のような輩だったら…倒す。」



この魔王の弟子…というやつは謎が多すぎる。


ひとまずここを通りたい。


「ってことで、通してくれませんかね?」


戦わずにすんだら一番なんだけど。


『ならん…ここは通すなと主人からの命令だ。帰れ。』


ですよねー。


「それじゃあ、力ずくにで…もっ!」


勢いよく走り出す。


『…愚かな。』


水龍は俺に向かって水の塊を吐き出してくる。


持ち前の脚力で左右にかわしながら、後ろに回り込む。


体がでかい分、動きが遅い…!!


すると水龍は巨大な尻尾で俺を壁に叩きつけた。


「ぐっ…!」


剣を盾にして防いだが、壁に当たって結構痛い。

「うわっ!!」


続いて水龍は水の塊を打ってくる。


「ファイアっ!」


炎を放って打ち消そうとするが、やはり威力が弱い。


「くそっ!!」


慌てて水の塊を避ける。



こうなったら…あんまりやりたくないけど…


俺は水龍の正面に回り込み、片手剣を両腕で持ち、グッと構える。


『…これで最後だ。』


とてつもなく巨大な水の渦が勢いよく放たれる。


俺は自分の体を魔方陣で包み、水龍を剣で受け止める。


「…はぁっ!!」


パッ水が弾け飛んだ。


俺の剣は金属製の剣から、水属性の剣へと進化していた。


『貴様…!私の水を…吸収したのか!?』


そう、俺には特別な体質が1つだけあった。


それは相手の魔力を吸収することができることだ。


ただし、あまり強大な魔力を吸収すると、キャパオーバーで死んじまうけど。


難点はこれを使うと、体力消耗が激しい。


だから、1撃で決めないと!


「ヘイストっ!!」


ヘイストは動きが速くなる魔法だ。


俺はあまり魔力が多くない。



これが最後の魔法だ。



一気に間合いまで詰める。


長い尻尾も速さでかわす。



『甘いぞ!』



右側から突然なにかがぶつかった。


「ぐっ!」


尻尾っ!?さっき避けたはず!


よく見ると、それは水でできた第2の尻尾だった。


「そんなんありかよ…」


水の尻尾は体に巻きつき、自由を奪う。


『終わりだ』


さっきと同じくらいの水の塊が放たれる。


「…バウォタ!」


俺のズボンのポッケが光り、水の壁が俺の前に現れる。


その水の壁は、見事に水龍の攻撃を防いだ。


『! スフィアか…』


ポケットの中で、パリンッと割れたような音がした。


一瞬だけ尻尾が緩んだのを見逃さず脱出する。


ヘイストで速くなった足を利用し水龍の懐に飛び込む。


「ご名答!これで終わりだ!!」


さっき水龍の魔力を吸収した剣を、深々と心臓ぐらいの位置に突き刺す。


『………』


水龍は水になり、地面にパシャり、と音を立てて消えた。


水属性vs水属性なので少し不安だったが、ちゃんと効いたようだ。



でも、なんだか違和感が…