「ん?前となにか変わった?」


メガネをケースから出しながら柚ちゃんに尋ねる。


茶色い豹柄っぽいフレームは少し細くなっているように見えるけど、それ以外には変わっているところは感じない。


「あぁ、前のだと顔が隠れすぎるくらいの縁があったから、細くしてもらったの。目の負担も考えてレンズも薄くしてもらったから。」


目の負担まで考えてくれてるの…。


本当に感謝してもしきれない。


メイクによってメガネをしなくても大丈夫そうだけれど、少し顔が隠れるから安心感が違うよね。


「それ、おばあちゃんの友人の方が経営してる会社のオーダーメイドだから。
後でお礼言いなよ」


柚ちゃんは早口でそう言い終えると、時計を見て、すぐに海澪さんと話し始めた。


私はその間に鏡の前に立って顔をペタペタ触る。


メガネをかけたり、はずしたり。


…すごい。


なんかもう、イケメンすぎて普段の私より数段いいよ。


性別間違えて生まれてきたの?


しばらくそんなことをしていると、海澪さんが近づいてきて、


「気に入ってもらえたようでよかった。また何かあったら来てくださいね。あ、何もなくても来てもいいのよ?
今日は柚ちゃんが急いでるみたいだからこれでお別れだけど…」


「はい!またお願いします!今日は本当にありがとうございました。」


感謝を込めて精一杯のお辞儀をする。


海澪さんはニッコリと笑ってまたね〜と、手を振ってくれた。


柚ちゃんはお礼をサラッと言ってもう外に出てるし。


淡々としてるよなぁ。


あれ、そういえばさっきメイクの凄さに感動しててあんまり話が聞こえてなかったけど…。


海澪さん、「身体はこれから」とか言ってたような…?


いや、でももう何も無いはず。


ウィッグもメガネも貰ったし…。


後は普通にショッピング!!


ワクワクとした気持ちでお店のドアをしめる。


「お姉ちゃん、次行くよー」


「え…まだなんかあるの?」


「……いや、服くらい買おうよ。休日全く出かけない訳じゃないでしょう?」


…?


いや、私は普通に買い物したいんだけど…。



「男物の服って事だよね?いらないよ?」


そういった瞬間、ゆずちゃんの目が鋭くなった。


「…お姉ちゃんはさ、学校の友人とか先輩とかとは出かけたりしないの?付き合い悪くない?いいの?それで。」


畳み掛けるように言うと、ギロりと睨まれる。


…怖いです。


「い、いやー。男物の服なんて全くわからないし…」


「私はデザイナー志望だよ?なんのためについてきたと思ってんの!」


「お金もそんなに持ってきてないし…っていうか待って、美容室の料金払ってないよね?!ウィッグも!!」


「いやさっき払ったよ。ついでにメイク道具も1式海澪さんが使ってた種類買ったし。」


「柚ちゃんはお金持ちなんですか?」


「おばあ様にはちゃんとお礼言わないとね〜」


そう言ってカードらしきものを指の間に挟み降っている。


もしや…クレジットカード?!


おばあちゃんのってことだよね?!


「私たちの進学祝いらしいから。限度額は決まってるけどね。だから、これで男物の服も買えるし、後で普通にショッピングする時もお金に気を遣わないでいれるね〜」


かるーい口調で柚ちゃんはそう言って歩き出したけど、とんでもないこと言ってるよね?


おばあちゃん、とりあえずありがとう。


心の中で土下座する勢いでお礼を言う。


帰ったらちゃんとお礼言おう。