目立たなくするためにウィッグの用意とメイクをしてもらっているのに、来週からは目立ってもらうって…。


私、遊ばれてない?


女だよ?女だからイケメンにはなれないよ?


なに、どれだけかっこよく出来るか挑戦!すごい燃えてきた!!みたいな?


もうそれ遊ばれてるで決定じゃん…。


ため息をつきそうになる。


柚ちゃんはカメラを構えてじっと観察してるし。


そういえば柚ちゃんってデザイナー志望だったよね?


なんで美容室にまで勉強しに来てるんだろう?


色々疑問が浮かぶけどまぁ、柚ちゃんは答えてくれないことの方が多いからな。


素直に疑問を頭から消した。



「よしっ!!できました!ねえねえねえ柚ちゃん!どう?!良くない?!」


海澪さんが私の後ろで嬉しそうに声を上げる。


メイクの時、目を閉じててって言われたから私には見えてないんだけどね。


「え、えと、もう目を開けてもいいですか?」


「もちろん!」





「……うぉ?!」


鏡に映るのは、完全に、男の、い、いわゆるイケメンというヤツだった。


え、なにこれ。私じゃないじゃない。


「おー。いいね、イケメンだ。すごい。」


柚ちゃんは予想していたかのようににやりと笑いながらも淡々とそういう。


「ねぇ、これなんでメイクっぽくならないの?!凄すぎる!!完全に別人!!」


「え、いや、女顔を男に似せてるだけだから別人っていう風には…。まぁでも隣に並べられたら男女の双子っていう感じだな。」


柚ちゃんは冷静にツッコミを入れてくるがこれはもう予想していたものとは完全に違った私にとってはなんだかもう、一大事なのだ。


すごい、としかいえない。


「あら?まぁ少しコツはいるけど、堀を深く見せて、骨格を少しずらすメイクをしただけよ。目元はほぼいじってないし。ナチュラルメイクもいいところだわ。」


海澪さんがキョトンとした表情で言った。


え、え?


ナチュラルメイクなの?これで?


別人なのに?


「可愛らしい感じのイケメンさんね。」


「そ、それは、その…女だってバレうる…?」


可愛い系男子、がどういうものなのかはわからないけれど。


それは女の子に近いということでは…。


「うーん。いや、顔だけだったら自分で言うのもあれだけど、メイクのおかげで男の子になってるから。大丈夫よ。体の方は…これから、ね?してもらうんでしょう?」


海澪さんは私に使っていたメイク道具を丁寧にしまいながら答えてくれた。


よかった…!顔は大丈夫っと。


それにしてもこんなにちゃんと男に、しかもイケメンになるとは。


「柚ちゃんはすごいねぇ」


「いや、私何もしてないけど。あ、ハイ、メガネ。新しいやつ注文しておいたの。」


眉一つ動かさずにメガネケースごとメガネを私に渡す。


ケースを開けてみると、それは前に貸してもらったメガネとそこまでデザインが変わらないものだった。